セガサミーホールディングス株式会社

DEI推進の鍵は「心理的安全性」。セガサミーホールディングスが描く、誰もが活躍できる職場づくりの本質とは

導入の目的

  • 性別に関わらず「多様な人財が一人ひとりの能力を最大限に発揮しながらキャリア形成できる」会社を目指すという、セガサミーグループ人事戦略における女性活躍推進の目的を理解してもらうため
  • 従業員に生理や女性の健康に関する知識を得てもらうだけでなく、体験を通じて「自分ゴト」として捉え、業務や同僚への配慮に活かしてもらうきっかけを作るため

導入の効果

  • 当初50名の枠が70名に増枠となるほど盛況で、参加者の約8割が男性、役員も参加するなど、役職や性別を問わず幅広い従業員の関心を集めることに成功した
  • 痛みで「パソコンの文字入力すら困難になる」というリアルな体験を通じて、当事者が抱える業務上の困難や精神的負担への具体的な想像力を男性や生理痛が軽い人に喚起させることができた
  • 研修後、管理職から「体調が悪そうな部下のために何ができるか」といった相談が寄せられるようになり、本イベントが女性活躍に関して安心して質問・相談できる雰囲気づくりの一助となった

多くの企業が課題とするDEI推進。どうすれば掛け声だけでなく、従業員一人ひとりの「自分ゴト」として浸透させられるのでしょうか。総合エンタテインメント企業であるセガサミーホールディングス株式会社(以下、セガサミーホールディングス。東京都品川区)は、設立当初からその組織文化の土壌を築いてきました。

そして、2025年3月、国際女性デーに合わせて生理痛体験研修を実施。参加者の約8割が男性だったそうです。この取り組みから「痛みでパソコンの文字入力がままならない」というリアルな気づきが生まれました。そこには「課題解決」からではなく「あるべき姿」から描くという、セガサミーホールディングスに根付くダイバーシティへの意識と理念がありました。

今回は、生理痛体験研修の戦略的な企画設計や、「年齢や性別にとらわれることなく活躍できる環境づくり」について、人財開発本部 人事部 企画開発課の石井優貴様にお話を伺いました。

【参加者】
セガサミーホールディングス株式会社 人財開発本部 人事部 企画開発課 石井優貴様
※本記事は2025年7月時点の役職・情報に基づいています

「課題解決」ではなく「理念」から。トップの理解が支えるDEI推進

――会社概要や事業内容について教えていただけますでしょうか。

石井様(以下、石井) セガサミーグループは、3つの事業を軸とする総合エンタテインメント企業グループです。 1つ目は、ゲームコンテンツからトイ・映像に至るまで多種多様な“遊び”を提供する「エンタテインメントコンテンツ事業」。2つ目は、パチンコ・パチスロの開発から販売までを手がける「遊技機事業」。そして3つ目が、統合型リゾートの運営およびカジノ機器の開発等を手がける「ゲーミング事業」です。

私が所属しているセガサミーホールディングスは、グループの持株会社として、経営管理などを担っています。

――石井様ご自身の担当領域について、詳しくお聞かせいただけますか。

石井 私の担当は、一言で言うとDEI推進です。セガサミーグループには人事戦略として「HCDGs(Human Capital Development Goals)」があり、年齢や性別などに関わらず「すべての従業員が能力を最大限に発揮できる環境の整備」に取り組むことでGroup Mission/Purposeである「Captivate the World 感動体験を創造し続ける~社会をもっと元気に、カラフルに。~」を達成するという目標を掲げています。

その部分、まさに誰もが活躍できる職場環境づくりが私のミッションです。具体的には、DEIに関する社内理解を促進するための施策を企画したり、誰もが働きやすい公平な制度を整えたりといった業務を行っています。

――DEI推進は、何か特定の課題があって始まったのでしょうか。あるいは、企業文化や理念として自然に根付いてきたのでしょうか。

石井 セガサミーホールディングスの設立は2004年ですが、翌年には「CSR推進室」が発足しました。企業の社会的責任や人を大切にする文化はその頃からあったと思います。

今のDEI推進に繋がる大きな流れができたのは2018年頃です。当時は個別の課題が顕在化していたというよりは、「すべての従業員が働きやすい職場を作ろう」という思いが第一にありました。その考えのもと、人事部門があらゆるハラスメントの禁止について就業規則・規程の改定を行うなど、包括的な規則改定を行ったのが大きな一歩でした。同時に、DEIに関する各テーマの理解推進施策も進んでいきました。 

他社の方と意見交換をすると、「課題が先にあって、そのための改善や対策を考えていく」というアプローチが多いようですが、当社は先に「公平公正で働きやすい職場にする」という方針を打ち出し、制度を整えていきました。そのアプローチは、従業員から「もっとこれがあったらよい」「こういう取り組みをしませんか」といった前向きな意見が出てくる土壌ができる一因になったと思います。

――トップの方の理解という点はいかがでしょうか。

石井 トップの理解があることは非常に大きい要素ですね。当グループのCEOは海外での勤務経験の中でDEIの重要性を肌で感じてきたようです。そうして培われた思いが、人事制度の改善や様々な取り組みへも反映されています。

「興味本位でもOK」――巧みな企画設計が生んだ熱量と、当事者意識の芽生え

――様々なお取り組みをされている中で、2025年3月、国際女性デーに合わせて生理痛体験研修を導入いただきました。そのきっかけは何だったのでしょうか。

石井 これまで、女性の健康や更年期、妊娠・出産などの理解に向けたセミナーなどを実施してきましたが、「女性活躍施策」という言葉が「女性だけを優遇する取り組み」と誤解されてしまう可能性があると感じていました。セガサミーグループのDEIは、性別に関わらず「多様な人財が一人ひとりの能力を最大限に発揮しながらキャリア形成できる」会社を目指すものです。そのためには、全従業員が知識を得た状態で、自分ゴトとして考えてもらった上で、業務に生かしてもらう必要がありました。

そこで、当事者意識を持つきっかけとして「体験型の研修」は有効ではないかと考え、インターネットで知った生理痛体験研修に関心を持ち、リンケージさんにお話を伺うことにしました。

――導入を検討するに際して、社内での反応はいかがでしたか?

石井 実は、私たちが企画を検討している段階で、グループ会社の男性従業員から「生理痛体験をやってみてはどうか」という提案があったんです。その方は、生理痛が重くて大変な思いをされた方が身近にいた経験から、性別特有の健康課題を抱える女性の部下と接する際にどのように配慮すべきかいろいろと考えたそうです。「自分のような立場の男性管理職に向けていい取り組みなのでは」という意見をいただきました。

また、女性従業員からも「生理痛のつらさは個人差が大きく、他人と比較できない。女性同士でも一人は重くて一人が軽いという場合に、お互いのつらさを分かってあげられない。理解を深める良いきっかけになるのではないか」と前向きな声をもらい、実施につながりました。

――研修はどのように実施されたのでしょうか。

石井 対象者は役職や性別を問わず、グループ全従業員としました。当グループにはオンラインゲームを開発している会社があるのですが、とあるゲームのキャラクターの設定では、「男」と「女」という選択肢ではなく、好きな体型や顔のパーツを選んでキャラクターを作ることができます。多様性を尊重し、人を大切にする社風の中で、クリエイターの感覚として、そこに性別は不要ではないかという考えに至ったとのことでした。この研修も、女性活躍や生理への理解だけでなく、そういったクリエイティビティの一助になればと考え、対象を絞りませんでした。

場所は従業員が行き交うことの多い社員食堂の隣にある図書エリアで、ランチタイムに実施しました。 ランチの後に通りかかった際に興味を持ってくれるように設計して、生理痛体験をした方が自分のデスクに戻った際に「こんなことをやっていたよ」と言ってくれて、興味を持った人が来てくれる……という社内での口コミの広まりを狙いました。

興味本位で来てみたという人も中にはいたと思うんです。ただ、担当者としてはそれでもよくて、体験を通じて「生理ってこんなに大変なのか」と知ってもらえれば、それがきっかけとなってその先に何をすべきか考えていただけると信じていました。

とはいえ、関心の高い従業員には必ず体験してもらいたいと思い、体験枠の約半数は事前予約にしました。結果的にはその予約枠はすぐに埋まり、当日もふらっと立ち寄って興味を持ってくれる方が多く、当初50名の予定だった体験枠を70名に増やすほど盛況でした。また、参加者の約8割が男性で、年代の偏りはありませんでした。役員が予約して参加するなど、経営層の関心の高さも伺えました。

――参加された方からは、どのような感想がありましたか?

石井 生理痛体験をしている最中に「パソコンを用意して感想を打ち込んでもらう」という試みを行いました。これは、もちろん我々へのフィードバックが欲しいという意図もありましたが、一番の目的は「その痛みの中で、普段通りの仕事ができますか?」という問いかけをしたかったんです。感想を打ち込んでエンターキーを押すと、その言葉がリアルタイムにモニターに表示される仕組みにしていました。体験をしていない人も、体験をした人がどんな気持ちになるのかを見られるような状態でした。

後からすべての感想を見返してみて最も印象的だったのは、内容そのものよりも、感想の約2割に誤字脱字や日本語の乱れ、変換ミスなどが見られたことです。「重いの意味が初めて分かった」「不愉快な感じ」など、いろいろなことが書かれていたのですが、痛みによって集中力が削がれるのか、普段通りに文字を打つことさえ困難になるんです。

体験を待つスペースに、生理や生理痛にまつわるデータを掲示していました。参加者の皆さんはそれを見ているのですが、頭で理解できていても、その後実際に疑似体験を行った後とは全然違ったと思うんですよね。やはり体験型ならではの理解の深さが提供できたと思っています。

「これが数日続いたら憂鬱になる」「今日から妻に優しくしようと思った」といった声もありましたし、女性からは「私は重い方じゃないんだ」などの感想もありました。痛みだけでなく、当事者が抱える精神的・感情的な負担や、家族への思いやりなど、多角的な視点を得てもらえたと感じています。

活動の最大の成果は「心理的安全性」。相談できる雰囲気が組織を強くする

――研修後には、社内で何か変化はありましたか?

石井 生理痛体験がきっかけかどうかははっきり分かりませんが、地道で継続的な理解推進活動の積み重ねで、少しずつ変化が生まれているように感じます。ここ半年ほどで、女性メンバーがいるチームのリーダーから、部下への配慮や女性活躍に関する制度に関する問い合わせの件数が少し増えました。

例えば「体調が悪そうな部下のために、自分に何かできることはないか」といった相談が寄せられるようになりました。私たちとしては、役に立ちそうな情報が掲載されているイントラネットのページを示したり、メールのやりとりを行ったりして対応しています。これは、生理痛体験のような取り組みを通じて、「分からないことや不安なことがあった時に、質問や相談ができる窓口がある」という心理的安全性が醸成されてきた結果かもしれません。その雰囲気づくりとして、生理痛体験は一つの大事な要素だったと思っています。会社がDEIに真剣に取り組んでいるという姿勢が伝わったことで、従業員が安心して声を上げられる雰囲気につながったと感じます。

――最後に、今後の展望やお取り組みの予定についてお聞かせください。

石井 これまでは、まずDEIの様々なテーマに関心を持ってもらう、つまり「0を1にする」ための施策を重視して行ってきました。今後はそれに加え、「セガサミーグループの中の必要な人に、必要な制度や情報を届ける」という視点に、より注力していきたいと考えています。

この生理痛研修だけで、セガサミーグループのダイバーシティへの考え方が正確に伝わるか、あるいは100%の従業員に興味を持ってもらえるかというと、そんなことはありません。だからこそ、担当者としては、「知って考える」というきっかけを発信して、「すべての従業員が活躍できる職場づくり」の本質につながる取り組みを継続的にやっていかなければならないと思っています。

働き方や自分のキャリア・ライフプランについて課題を感じている従業員に対し、会社の制度や取り組みが解決の一助となるのであれば、的確にその情報を届け、職場環境を改善していく。そうすることで、すべての従業員がより一層いきいきと働ける企業づくりに貢献していきたいです。その過程で、例えば「管理職にやはり生理痛体験をしてもらった方がよい」という話になるのであれば、生理痛体験研修をまた実施することも、選択肢の一つとして考えられるかもしれません。個人的には、「セガサミーグループができるなら、うちの会社でもできるかもしれない」と思って様々な施策に取り組む企業が増え、社会全体がより良い方向に進んでいってくれたらうれしいと感じています。

セガサミーホールディングスの石井さま、お忙しい中お話をいただきありがとうございました。

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