岡本株式会社

「どうすればいいかわからない」に応えた生理痛体験研修。岡本株式会社のボトムアップ活動から生まれた「思いやりナプキン」

導入の目的

  • 「女性の健康課題に配慮したいが、何をすればいいかわからない」という男性社員の戸惑いを解消し、漠然とした理解から具体的な行動へつなげるため
  • 社内アンケートで可視化したデータと、身体的な「痛み」の体験を結びつけ、女性特有の悩みを組織全体の課題として「自分ごと化」するため

導入の効果

  • 研修当日に社長が行動を後押ししたことで、トイレに生理用品を設置する「思いやりナプキン」活動がスピーディーに導入され、社員の要望が形になった
  • 普段は話しにくい健康課題について、役職を超えて率直に意見交換する場が生まれ、社内のコミュニケーションが活性化した

「どうすればいいかわからない」。多くの男性社員が抱える、性別による健康課題への戸惑い。「脱げないココピタ」で知られるレッグウェアメーカーの岡本株式会社では、社員有志による活動をきっかけに、社内の相互理解を深めるため生理痛体験研修を実施しました。

社内研修で発足した有志チームで取り組んだテーマは「フェムテック」。この活動は社員へのアンケートから、具体的な生理痛体験研修へとつながっていきます。研修での気づきは、役職を超えた対話を生み、お手洗いにナプキンを設置する「思いやりナプキン」活動への実現へと発展しました。

今回は、有志チームのうち4名の方に、約2年間の活動を通じたチームの挑戦とその内容、成果についてお話を伺いました。

左から嶋田様、大塚様、井上様、原様

【参加者】
岡本株式会社 経営企画室 経営企画グループ CIチーム 大塚美和様
岡本株式会社 マーケティング2部 嶋田康佑様
岡本株式会社 マーケティング2部 原 菜摘様
岡本株式会社 マーケティング5部 井上真希様
※本記事は2025年8月時点の情報に基づいています

多様な部署からメンバーが集結したきっかけは「フェムテック」

――岡本株式会社様について、簡単にご紹介いただけますでしょうか。

大塚様(以下、大塚) 私たちは、企画開発から製造、販売までを一貫して行うレッグウェア専門メーカーで、奈良県で創業した会社です。

「足もとから、ひとりひとりの幸せを共に創る」をミッションに掲げ、お客様が靴下を履いた時にその価値を実感できるような製品をお届けすることに注力しています。足の研究を行いながら、お客様のお悩みに寄り添い、解決する商品開発に力を入れています。男女比はだいたい半々で、製造現場で働いているメンバーに女性が多いのが特徴です。

――ありがとうございます。では、皆さまのご担当部署と普段の業務についてご紹介をお願いします。

大塚 コーポレートサイトや会社案内、社内報の運営など、コーポレートブランディングに関連する領域を担当しています。

嶋田様(以下、嶋田) 主な担当はオーバーパンツの企画です。いわゆる「くろぱん」と呼ばれる、スカートの下に履くレッグウェアを担当しています。

原様(以下、原) 今、当社が注力しているブランド「脱げないココピタ」シリーズの担当をしています。

井上様(以下、井上) 総合スーパーなどの得意先に向けたプライベートブランドの靴下の企画に携わっております。

――皆様はそれぞれ業務が異なりますが、どのような経緯で集まったのでしょうか?

大塚 もともとは社内研修がきっかけで、ある1つのテーマに沿って戦略提案をする機会があり、その時に「フェムテック」をテーマに集まったメンバーです。今回この場に来られなかったメンバーが他に2名います。フェムテックを扱おうという方向になったのはメンバーの発案で、そのテーマに基づいて戦略を構想する中で、リンケージさんの生理痛体験研修へとつながりました。

――フェムテックといっても、かなり範囲が広いと思いますが、どのようにアプローチしたのでしょうか。

 私たちがフェムテックという大きなテーマに取り組むことになった時に、私たちの本業であるモノづくりをするのかどうか曖昧なままスタートしたので、当初は結構戸惑いがありましたね。

大塚 提案内容を考える中で、お客様に向けた商品開発という方向性はもちろんありましたが、それに取り組む企業として、まず社内が「女性特有の悩みに寄り添える体制」であるべきではないかと考えました。

――男性である嶋田様は、テーマについて自分に縁遠いと感じませんでしたか?

嶋田 生理関連の商品開発にも携わったことがあったので、自分にとってフェムテックは遠い存在ではなかったんですね。チームや会社のこととしてやっていけるのはいいなと感じました。

アンケートで見えたリアル「配慮したいけど、どうすれば?」

――「社内の関心を高める」という点について、具体的にどのような課題があったのでしょうか。

大塚 2024年12月に、社内で男女合わせて331名が回答協力をしてくれたアンケートを実施しました。その結果から、生理やPMS(月経前症候群)などの体調不良で悩んでいる女性社員の割合が、一般的な調査でいわれる「日本人女性の約7割」とほぼ同じ傾向が見られることが分かり、社内にも悩んでいる人がたくさんいるのだと実感しました。

――男性社員へのアンケートはどういう内容にしたのでしょうか?

原 男性には「体調が悪そうな女性社員がいたらどうしますか?」といった質問をしたのですが、「配慮してあげたい」という回答が非常に多い一方で、「何をどうしてあげたらいいかわからない」と答えた方もすごく多かったんです。生理がつらいものだという漠然とした理解はあっても、具体的な行動に移せずにいる男性社員が多いことがわかりました。

――そこから生理痛体験研修の導入へつながったのでしょうか。

大塚 はい。社内の関心を高める方法を考えていく中で、研修時にメンバーの一人が生理痛体験に関する情報を見つけて共有してくれていたのがつながりました。

原 生理痛体験研修の目的は、「男性の理解促進」「女性同士の相互理解」のどちらかにフォーカスするのではなく、「社内で互いに理解し合っていくこと」としました。女性同士でもわかり合いたい部分はありますし、男性には体験してみないとわからない部分があります。

大塚 また、今後の活動を広げていく上で、私たち自身も手探りだったので、まずはこの研修をテスト的に実施して、社内でどんな反応が出てくるのか見てみたいという思いがありました。

 社内に生理も含めた女性の体調変化への理解を促そうとする時に、素人の私たちがいろいろやるには限界があるので、外部の力をお借りして、一度まず何かをやってみるということが突破口になりそうだと考えました。

大塚 アンケートを実施したことで自分たちの会社の実態に少し近づけたので、それが生理痛体験研修と重なることで、実際に感じる痛みと社内の女性の困りごとがひも付き、「自分ごと」につながっていくのではないかと感じました。

生理痛体験から生まれた「思いやりナプキン」。小さな一歩が大きな変化に

――生理痛体験の当日は、どのような雰囲気でしたか?

大塚 「生理痛体験をしてみたい」と前向きに参加してくれるメンバーが集まり、私たちを含めて25名が5つのテーブルに分かれて体験を実施しました。できれば役員層に体験してもらいたいと案内した結果、社長も研修に参加してくださいました。参加者の中には、家で奥さんに話をしたら「絶対体験してきて」と言われた男性社員もいました。

――特に印象的だったことは何ですか?

大塚 私がいたテーブルは私以外全員男性だったのですが、部下に女性が多いマネジメント職の社員もいて、普段から部下の体調の波に気を配り、自分なりにどう向き合うべきか考えているという生の声を聞くことができました。普段は話題にしづらいテーマについて、役職や性別を超え、率直に対話ができたことが非常に新鮮でした。

 私は、研修冒頭の「会議が長引いて、お手洗いに行けなかったら?」という講師からの問いかけにハッとさせられました。回答が明確にある問いではないのですが、どうしても長時間の会議は起こりうることです。また、同じテーブルだった社長をはじめ、男性社員の方々がディスカッションに非常に真剣に取り組んでくださっていたのが印象的でした。研修後に社長は「こういうことを皆で考えるのは大切なことだ」と発信してくださったので、会社が一歩進むことができたのではないかと感じました。

嶋田 僕のテーブルでは男女半々で、女性同士でも痛みの感じ方が違うことに驚きました。そして、僕を含めた男性陣は、体験した痛みが「耐えるのがつらい」レベルで、想像していたものと全く違ったことに衝撃を受けました。これまでは想像できていたつもりになっていただけで、全然違ったのだとわかり、この経験を通じて人に優しくなれた気がします。

井上 参加した男性社員の一人が「この研修は全男性が受けるべきだ」と話していたとき、それくらい意義のある活動ができたとしみじみ実感できました。生理の痛みは、男性が自ら進んで知ろうとすることは難しいテーマです。そうした貴重な機会を提供できて良かったと思いますし、嶋田さんのように、一人でも多くの女性に共感し、寄り添ってくれる男性が増えたのではないかと思っています。

――研修の後に、社内に具体的な変化は生まれましたか?

大塚 実は研修当日に社長が「次のアクションにつなげよう」と呼びかけられたことをきっかけに、具体的な動きにつながりました。研修に参加していた福利厚生を担当する総務のメンバーと連携し、お手洗いに生理用ナプキンを設置する「思いやりナプキン」という活動が実現しました。社内アンケートの実施から社員の皆さんの声に応えるという一つのアウトプットができたと感じました。

――非常にスピーディーな展開ですね。

原 アンケートでは、会社に求めることとして休暇制度への要望もいただいたのですが、規程の変更にはどうしても時間がかかります。一方で「お手洗いにナプキンを置いてほしい」という声も複数あり、これなら実現できるのではないかと考えました。社長も「今すぐできることをまずやってみよう」というスタンスで後押ししてくださいました。設置後、同僚からチャットで「あれはすごくうれしかった」と感謝の言葉をもらえた時は、本当にやってよかったと思いました。

大塚 「まずやってみる。やらなきゃ何も変わらない」という言葉は、当社の価値観である「okamoto Way」の一つなのですが、今回のようにボトムアップで体現できた事例が増えることは、次のやってみようにつながるように思います。当日、社長からは「生理痛体験で集まったメンバーから、何か一つ形にできたらいいね」という言葉をいただき、参加した男性社員からも「これならすぐできるのでは」という後押しの声をもらいました。

――運用に際してハードルはなかったのでしょうか。

大塚 「本当にできるのか」「運用が大変なのでは」という声もゼロではありませんでした。

井上 行き詰まったこともありました。私のいる事業所では、総務専属の担当者がいないということもあり、「誰がどうやって管理するか」という課題をクリアするのに少し時間がかかりました。研修に参加してくれた当時の総務部長などが後押ししてくれたおかげで、全社で実施することができました。この成果は、約2年の活動の中で地道に仲間を巻き込んできた結果の集大成だと感じています。

大塚 私たちがそもそも有志のメンバーなので、自分たちの担当領域外のこととなると、 「協力・賛同してくれる人がいないとできない」という場面が多々あります。生理痛体験研修は、私たちの思いに賛同してくれる、共鳴してくれる仲間と出会うことにもつながったかなと思います。

活動を次の世代へ。この思いを会社に根付かせたい

――約2年間の有志での活動を経て、皆さまの今後の展望についてお聞かせください。

大塚 私たちの活動については、今後は総務など担当部署にバトンをつなげ、地道に活動を積み重ねていけたらいいなと思います。個人としては、会社のサステナビリティ活動にも関わっているので、今回の「思いやりナプキン」の取り組みなどをきちんとそちらにもつなげていきたいです。

原 今回の生理痛体験で、普通だったら踏み込みにくい領域の活動にあえて会社として踏み込めたのは良いステップになったと思います。「業務外の有志活動が一つの形になった」という新しい事例を社内に作れたことが、とても大きな成果だと思っています。私たちの後にも、何かやりたいと思った人が行動を起こせるような文化が続いていったらうれしいです。

嶋田 約2年間の活動を通じて、同じ思いのメンバーが集まって実行できたということが、他の事業にもつながる良い見本になればと思います。個人的には、今回の経験を活かし、中長期的にはフェムテック関連の商品開発に挑戦できればと考えています。

井上 まだナプキンを設置できていない事業所もありますので、まずはそちらへの働きかけを続けていきたいです。そして、またこのメンバーで集まって、何か小さくても新しいことができればいいなと思っています。

大塚 私たちの活動は、次の世代の社員にも思いをつないでいけるかなと思っています。本業とも向き合いながらの活動、踏ん張りましたよね、私たち!

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岡本株式会社の大塚様、嶋田様、原様、井上様、お忙しい中お話をいただきありがとうございました。

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