導入の目的
- 男女関係なく、女性が生理中に抱えるつらさを疑似体験し、当事者意識をもって理解を深めるため
- 生理など体調不良に関する「言いにくい」「聞きづらい」といったコミュニケーションの壁を取り払い、互いに気持ちをわかり合うきっかけ作りのため
導入の効果
- 男性から「普通に出勤していることが信じられない」という声が出るなど、女性の健康課題への理解が深まった
- 女性社員が「生理で休みます」とオープンに伝えやすくなり、男性上司も「お大事に」と自然に返せるなど、コミュニケーションが改善された
1927年創業の歴史を持つ、株式会社日本電商。電設資材や設備機器を取り扱う総合商社である同社は、近年、事業領域とは一見異なる取り組みを行っています。生理用品の無償化に向けた動きや、生理用品ディスペンサーの設置に関するプロジェクトです。
始まりは、2021年に目にとまった一本の新聞記事でした。「生理の貧困」という社会課題の存在を知ったことで、全く知見のない状態から生理用品ディスペンサーの開発に着手。さらに、組織内の相互理解を深めるため、生理痛体験研修を導入し、社内の環境整備だけでなく、女性特有の健康課題にも踏み込んでいます。
これらの活動を、企画から実行まで推進してきたのが、営業企画グループの辻󠄀 忠宏様です。社内では「生理のおじさん」として親しまれる辻󠄀様に、プロジェクト始動の経緯から研修後の社内の変化、そして活動の先に描く未来について、詳しく伺いました。

【参加者】
株式会社日本電商 営業企画グループ ソリューション開発チーム 主幹 辻󠄀 忠宏様
※本記事は2025年8月時点の役職・情報に基づいています
事業内容とは異なるゼロからの挑戦、生理用品無償化プロジェクト
――はじめに、事業内容と辻様のご担当業務についてお聞かせください。
辻󠄀様(以下、辻󠄀) 1927年創業で、電設資材・設備機器の販売から施工管理まで一気通貫で取り扱う総合商社です。照明やエアコンなど電気に関するものであれば何でも扱っており、身近な住宅や大規模な施設まで、約3,000社以上のお客様とお取引をしています。私は営業企画グループに所属しており、主にマーケティングや企画を担当しています。
私が今一番力を入れているのが、生理用品に関する環境づくりです。生理用品もトイレットペーパーと同じ感覚で使用できる環境を目指し、大阪大学が開発した段ボール製の生理用品ディスペンサー「Mewディスペンサ―」を販売してきました。大阪・関西万博の一部のトイレにも設置しました。
樹脂製の生理用ナプキンディスペンサー「チャームアクセス」も開発・販売を新しくスタートしています。特徴としては、電源を使わないため、非常時にも安心して生理用品が使用できることです。また、プッシュ式で、1枚ずつ取り出せるため、衛生的でもあります。設置に関してはディベロッパーと一緒に実証実験も行っています。
――電設資材や防災機器などを取り扱う商社である貴社が、生理用品の無償提供に取り組まれるようになったのは、どのような経緯があったのでしょうか。
辻󠄀 最初は2021年、コロナ禍の最中に新聞に掲載された記事の存在でした。それは「生理の貧困」に関する記事で、コロナ禍で職を失ったり収入が減ったりした方々が、生活費を切り詰めるために生理用品を買えずにいる、という内容でした。
その記事をきっかけに、日本電商として何とかできないかというところから、生理用品に関する取り組みが始まりました。そして私がその担当者になったのです。全く関連事業のない、ゼロからのスタートでした。

――具体的には、どのようにプロジェクトを進められたのですか?
辻󠄀 まずは自分たちの会社から始めようと、社内の女性トイレに生理用品を無償で置くためのディスペンサーを作ることにしました。幸い、当社は材料を取り扱う業種なので、それを応用して、私自身が設計から製作まで行って50台ほどディスペンサーを作り、全国27ヶ所の事業所の女性トイレに設置して回りました。
当初は学校への設置を目指して地方自治体や教育委員会にも足を運びましたが、予算や管理の問題で壁にぶつかりました。そこで、発想を転換し、企業向けにこの取り組みを提案する方向に舵を切りました。
導入目的は、「言いにくい」「聞きづらい」の壁を取り払うきっかけづくり
――2025年3月に生理痛体験研修を実施いただきました。導入のいきさつについて教えていただけますか?
辻󠄀 女性が困っていることについて解決方法を調べていく中で、リンケージさんが実施した他社の研修に関する記事を偶然見つけたのが直接のきっかけです。
――貴社では女性活躍推進にも力を入れているそうですが、辻󠄀様はそのご担当でしょうか?
辻󠄀 全くそうではないんです。僕が記事を見つけて、役員に見せました。そこから人事経由で、生理用品に関わっている私のところに話が来て、コンタクトを取ったという流れです。年に一度、全国の管理職が集まる会議の場での実施を決めました。
――導入の目的について教えてください。
辻󠄀 導入した目的は、管理職に「女性はこういうつらさを抱えながら働いているんだ」ということを少しでも理解してもらうためのきっかけ作りです。例えば、男性上司は女性部下の体調を気遣いたくても、どう声をかけていいかわからない。生理の話は特に聞きづらい。一方で、女性側も男性に対して生理のことを言い出しにくい。生理痛体験をすることで、そういった壁を取り払って、互いに気持ちをわかり合い、どう接していくかをこれから考えていくための第一歩になればと考えました。
――研修にはどのような反応がありましたか?
辻󠄀 感想はさまざまでしたが、男性の場合は「こんな痛みを毎月……?」と顔をゆがめたり、涙を流したりする人もいました。「女性が月経期間の約1週間とその前後の不調を我慢しているのがすごい」「普通に出勤していることが信じられない」という声が非常に多かったです。当初の目的だった「痛みやつらさを想像するきっかけ」には十分になったという手応えがありました。
研修後の変化と、「生理の貧困」をやわらげる未来

――研修を経て、社内に具体的な変化はありましたか?
辻󠄀 すぐに制度が変わるといった大きな動きはありませんが、コミュニケーションには良い変化が生まれています。特に私の部署では、女性社員が「生理で休みます」とオープンに言えるようになりましたし、男性上司も「お大事に」とごく自然に返せるようになりました。小さな一歩ですが、非常に大きな変化だと感じています。
私自身は、生理用品に関わる活動を始めてから、社内で「生理のおじさん」と呼ばれることが多くなりました。そのおかげで、他の営業所に行っても女性社員たちが生理に関する話を気軽にしてくれるようになりました。
――さらっとそのような返答ができるようになったのはいい変化ですね。最後に、今後の展望についてお聞かせください。
辻󠄀 「生理のおじさん」の個人的な目標としては、公立・私立関係なく、全国の小学校・中学校・高校の女子トイレに、生理用品が無償で置かれる環境を作りたいです。企業や大学への導入もさらに進めていきたいですね。生理用品が、今のトイレットペーパーの存在のように、そこにあるのが当たり前の社会にしたいです。
「生理の貧困」は女性が抱える問題の一部ではありますが、少なくとも我々の活動は「生理の貧困」をやわらげることはできるはずです。時間はかかるかもしれませんが、その未来を目指して活動を続けていきたいと思っています。
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日本電商の辻󠄀様、お忙しい中お話をいただきありがとうございました。