導入事例

NEXCO中日本サービス株式会社

「本当に痛いんだね」男性上司の言葉が変わった。NEXCO中日本サービスでの体験型研修が生んだ"互いを思いやる"職場文化

導入の目的

  • 女性社員が多く在籍する中で、生理休暇が無給であることや心理的な要因から取得しづらい状況を改善するため
  • 研修で得られた共通認識を土台として、生理休暇の名称変更等の検討を進めるため

導入の効果

  • 研修参加者の満足度は高く、生理への深い理解と、当事者への思いやりの気持ちが醸成された
  • 研修を受けていない女性社員からも「休暇の申請がしやすくなった」「もっと広めてほしい」というポジティブな反響があり、職場全体の安心感向上につながった
  • 社内報やグループ報を通じて取組みが認知され、グループ会社とのコミュニケーションのきっかけになった

NEXCO中日本サービス株式会社(以下、NEXCO中日本サービス)は、ダイバーシティの推進に向け、働きやすい職場に向けて意見交換や各種活動などを行うワーキンググループを結成してさまざまなバックグラウンドを持つ社員が参加するほか、ライフイベントに関わる育児休業・介護休業などをわかりやすくまとめたガイドブックを制作するなど、多角的な取組みを行っています。

2022年7月にはダイバーシティを統括するCDO(最高ダイバーシティ責任者)を設置。その後、ワーキンググループでは研修や講演会、生理休暇の見直しに向けた検討・調査を行うなど、活動をさらに加速させています。

今回は、NEXCO中日本サービスにおけるダイバーシティに関する具体的な取組み、その中での生理痛体験研修の導入、そして今後の展望について、CDOの永冶聖野様にお話を伺いました。

【参加者】
NEXCO中日本サービス株式会社 CDO 兼 総務企画部 広告・コミュニケーション事業課 永冶聖野様
※本記事は2025年8月時点の役職・情報に基づいています。

多様性とDE&Iを推進する「CDO(最高ダイバーシティ責任者)」の取組み

――会社概要や事業内容について教えていただけますでしょうか。

永冶様(以下、永冶) NEXCO中日本サービスは、主に中日本高速道路株式会社(以下、NEXCO中日本)の高速道路事業を支援する子会社で、20業種ほどのさまざまな事業を手掛けています。本社は名古屋と東京にあり、NEXCO中日本の管轄するエリアには拠点が100カ所以上あります。従業員数は派遣社員、パート社員を含め約1000名です。

事業内容は多岐にわたり、不動産を管理する事業や、NEXCO中日本の社員の研修を受託する研修事業、 NEXCO中日本に人材派遣を行っています。皆さまに一番身近なのは、高速道路のサービスエリアに配置している「エリア・コンシェルジュ」かもしれません。その受付の窓口を担当するのも、NEXCO中日本サービスの社員です。

私が所属しているのは総務企画部の「広告・コミュニケーション事業課」で、NEXCO中日本グループ全体のグループ報や社内報、グループ会社の社内報を制作しています。人事採用に関する動画制作にも力を入れているほか、NEXCO中日本の各支社(東京・名古屋・金沢)から地域の皆さまに向けて発行する冊子の編集ノウハウも持っています。 

――非常に幅広い領域を担当されているのですね。永冶様ご自身の業務内容についても詳しくお聞かせください。

永冶 私はCDOと総務企画部の業務を兼務しています。2022年7月に当社でCSO(最高SDGs責任者)、CHO(最高健康経営責任者)、CDOの3つの役職を設置し、私がCDOに任命されました。DE&I(ダイバーシティ エクイティ&インクルージョン)に取り組んでいる会社は多くありますが、当社でも「生き活きと輝く職場」をビジョンに掲げて取組みを行っています。

――「CDO」という役職は比較的新しいと思いますが、新設された経緯は何だったのでしょうか。

永冶 当社では社長はじめ役職に就く人に男性が多いため、 取締役の方が出る会議の場に女性を登用したいという社長の思いがあったようです。「CxO」という役職であれば柔軟な名付けができますし、経営方針としてSDGsや健康経営、ダイバーシティに積極的に取り組む姿勢を示す狙いもありました。

――CDOの役割や仕事内容を教えていただけますか?

永冶 CDOに任命された当初(2022年7月)は、「ダイバーシティ」という言葉は世の中に浸透しつつあったものの、何から手をつければいいのかわかりませんでした。そこで、CHOと一緒に、まず会社の皆さんがどうやったら働きやすくなるのかを考えました。そこで掲げたのが、目指すビジョンとしての「生き活きと輝く職場」です。 

就任1年目には、まず全社員を対象にダイバーシティの基礎知識を持ってもらうための eラーニングを行い、ダイバーシティがどういったものか把握していただきました。次に育児と介護に関するガイドブックも制作しました。自分自身で出産を経験した中で、仕組みがわからない部分が多いと感じたのがきっかけです。それまでは簡単に概要をまとめた資料を渡すだけだったのですが、役立つ冊子を作ることにしました。

2~3年目の頃は、 SDGsとダイバーシティの親和性が高いことから、 SDGsの責任者と連携し、「お笑いを通して社会を良くしよう」という活動する国際夫婦漫才コンビのフランポネさんを招いて、SDGsとダイバーシティに関する講演会を開催しました。また、障害のあるお子さんを持つお母さんと交流があったので、 講演会に登壇していただいたり、健康とダイバーシティ、社内コミュニケーションを活性化させる「ボッチャ大会」を開いたりなどの活動をしていました。

女性が7割以上の職場でダイバーシティへ取り組む意義と、「生理休暇」に関する提案

――会社全体でのダイバーシティへの取組みについて教えていただけますか?


永冶 CDOに就任してすぐに、ワーキンググループを立ち上げました。自分一人だけでは、兼務ということもあって全部の課題に着手できないですし、ダイバーシティを推進するからには幅広い方々の視点があった方がいいということで、私の方でいろいろなバックグラウンドを持っている方を中心にメンバーを集めてワーキンググループを結成し、メンバーと一緒に取組みを始めました。具体的には、私の方で「今年はこういうことをしたい」と組み立てた大枠にメンバーから意見をもらい、取り組むべきことの優先順位付けをしていきました。

――最初からダイバーシティを推進する土壌が社内にあったのですね。 

永冶 そうですね。「健康経営優良法人」の認定取得や、スポーツ庁の「スポーツエールカンパニー」へのエントリーなどを通じて、社員の健康意識を高める活動が以前からありました。

当社は女性が7割以上いますので、女性活躍推進については研修などを通じて学ぶ機会があります。その上で、2024年にダイバーシティとして何を行っていくか考えた際に、「生理休暇が取得しづらい」ということが話題になりました。生理休暇が無給ということもあり、有給休暇を使って休んでいる方が多いですね。

――その課題解決の一環として、生理痛体験研修をご導入いただいたのですね。

永冶 はい。2024年に ワーキンググループで「何か体験ができる研修をしたい」という話になり、インターネットで調べて、リンケージさんの研修にたどり着きました。痛みは、言葉で伝えてもなかなか伝わらないものですよね。まず生理痛体験研修を実施した上で、生理休暇のあり方を考えていこうという流れになりました。

また、当社は拠点が多いという特徴もあるので、オンラインでも受講できる研修も探し、生理の基礎知識などに関する動画研修も併せて導入しました。生理痛体験研修に直接参加できない方には、オンライン研修を受けていただきました。

――生理休暇の見直しに着目された理由についてあらためてお聞かせいただけますか。

永冶 女性が多い職場だからこそ、生理休暇のあり方を変えていきたくて、第一歩として名前を変えるところから始めようと思いました。研修(体験・動画視聴)の参加者を対象としてアンケートを実施するとともに、生理休暇の利用実態を調査しました。アンケートでは、「生理休暇という名前がよくない」との意見が多く、「上司に言いにくい」「時代に合った名前になるとよい」などの声が寄せられました。調査結果を受けてワーキンググループで生理休暇の目指すべき姿をまとめ、規程の管轄部署である「人事・ES課」へ提案しました。名称については「エフ休暇」としました。 

――「エフ休暇」という名前はどのように考えたのですか? 

永冶 名前はワーキンググループのメンバーで考えました。他社の事例や新しいものなど候補はいろいろ出ましたが、最終的に女性を示す「Female」の頭文字「F」から取りました。直接的に生理を連想させにくい名称にすることで、取得しづらさを考慮した形としました。

将来的には、女性特有の理由にとらわれず、他の病気や治療などへ対応できる「セルフケア休暇」のような形に発展してほしいと考えています。取得形態についても、1日だけではなく、時間単位や半日単位で取得できるよう規程を見直した提案としました。

――従業員数も拠点も多く、勤務形態も多様な中では、仕組みを見直していくのは大変そうですね。

永冶 おっしゃる通りです。意外とみんなで足並みをそろえて動くのは簡単ではありません。スピーディーに変えたいとは思っても、一つ変えると他の部分にも影響が及ぶことがあります。でも、「見せ方」を変えるだけで、もう少し取得しやすさは改善されるのではないかと考えています。

グループ間での生理痛体験研修の実施とその広まり

――2024年8月には名古屋本社、2025年1月には東京本社、2025年5月にはグループ会社である中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋株式会社(以下、中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋)と合同で生理痛体験研修を導入いただきました。それぞれの概要について教えていただけますか?

永冶 2024年8月の研修では、人数の多い名古屋本社で体験研修を実施しましたが、現場の方々は業務がある中で本社へ来てもらうのは難しいため、先ほどお話しした通り、研修と動画視聴を組み合わせる形を取りました。

名古屋本社の研修の満足度が高く、理解も進みましたので、東京本社でも実施することにしました。その際には、この活動がグループ間でも広がることを願って、中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社から2名を研修に招待しました。東京本社のワーキンググループメンバーにも体験してもらい、手応えを感じました。

さらに、中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋と合同で、現場の社員を対象とした研修も実施しました。合同開催に至った経緯は、中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋の女性技術者から「生理で突然休むとサボっていると思われないか不安」「男性にも生理を理解してほしい」という声があったためです。

――研修の対象となる方はどのように決められたのでしょうか?

永冶 本社では、休暇の承認権限を持っている上司に当たる方はなるべく出席してほしいと伝えました。また、各課で最低1~2人くらい、多くの方に体験してもらいたいなと思いまして「男性の社員はぜひどうぞ」と広く呼びかける形としました。研修後のアンケートでは過半数が「新たな発見と気づきがあった」と回答がありました。

5月の中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋との合同開催で一緒に体験できたことで、両社の現場の方々に体験する機会を作ることができてよかったと思っています。参加者からは、「自分が生理休暇を利用することがないこともあり、無給だと知らなかった。利用しやすくするための工夫が必要だと思った」「生理痛、または男女に限らず、互いに思いやりを持った職場づくりが大切だと再認識した」という感想が寄せられました。

――グループ間での情報共有はどのようにされているのですか?

永冶 当社で始めた取組みを社内報や、NEXCO中日本グループ全体の「グループ報」に掲載することで、「NEXCO中日本サービスは面白い研修をやっている」と声をかけてもらう機会が増えました。NEXCO中日本グループからも、よい取組みの事例として取り上げていただきました。

永冶 NEXCO中日本グループとして安全に関する合同研修を行うことはあるのですが、当社が主体となってグループ会社と何かを実施することは、これまであまりありませんでした。

同じエリアで働いている者同士、普段は一緒に働くことが少なくても、コミュニケーションが広がるきっかけづくりとなりました。グループ会社と一緒に生理痛体験研修を実施できたのは、とてもよい機会だったと思っています。

互いに思いやりを持った職場づくりが大切だと再認識

――生理痛体験研修の当日、特に印象的だったことがあれば教えてください。

永冶 男性が積極的に参加してくれたのがうれしかったですね。生理の話題は女性社員同士だとしても普段から交流がないと話しづらいですし、これまでは「ちょっと今日重いので」「お腹が痛いので休みます」程度の話題しか聞くことがありませんでした。しかし、研修後のお昼の時間で、参加者同士で引き続き研修に関する話をしてくれたり、参加できなかった方に「こんな体験をした」と話したりしていました。

体験後に、男女で一緒に話す場があったのもとても有意義でした。男性からは「パートナーのことでこういうような体験があった」「女性がイライラしている時は、自分はあまり波風を立てないようにしている」という話もあれば、普段からサポートしていたり、今後はサポートしていかないといけないと感じてくれたりする方もいました。自分自身でも、月経過多が病気につながる可能性などの話を聞いて、多くの気づきがありました。 

PMSや無月経といった症状が将来の健康や妊娠・出産にも関わってくるという知識も得られました。性に関する知識については小学校の性教育の機会に学んだぐらいで、その時に理解できなかった正しい知識を改めて学び直せましたので、社内の皆さんの中でも理解が深まったと感じます。特に男性上司からは「本当に痛いんだね」「この痛みが何日も続くのはつらい」という思いやりの歩み寄りも大きく見られましたね。

――研修後、社内に何か影響はありましたでしょうか。

永冶 掲載された社内報を現場の方々も読んでくれて、研修を受けていない女性の方から「気になった」「研修をやってくれたから、少し休暇の申請がしやすくなった」「もっと広めてほしい」という声をいただけました。男性にとっても、生理について知ることは、自身のパートナーやお子さんなど、プライベートでも考えることにつながっていると思います。また、テレビやニュースなどで生理痛体験研修が取り上げられているのを見て「前に会社でやった研修だ」と話題にしてくれる人もいました。

――他のメディアでも注目してくださり、大変ありがたいです。

永冶 「体験」の研修という形式がよかったと思います。講習のような座学ももちろんためにはなりますが、自ら体験して、身をもって知ることで、深く印象にも残りやすいですし、その後の感じ方や考え方を変えることにつながる可能性が高いと思っています。

昨年ダイバーシティの取組みとして、課ごとに月1回ある「職場討議」という時間を使い、名古屋市の「ソレイユプラザなごや」という施設で体験研修を行いました。そこでは人権研修として車いす体験や妊婦・高齢者の疑似体験、白杖の体験ができるのですが、これも理解度の向上に効果的でした。特にエリア・コンシェルジュは介助の資格を持っている方もいますが、実際に車いすのお客様も多くいらっしゃるので、自分で車いすに乗ってみて「坂道はこんなに大変なのか」などと実感できるようです。

――今後の展開の予定についてお聞かせください。
 
永冶 CDOとしては、今度は「介護」に関する取組みを進めたいと思っています。今後は介護休暇を取得する人も増えてくるので、まずは介護の基礎知識を身につける必要があると感じ、一度研修を実施しました。この後1年は介護をメインとして、いろいろな知識を得てもらえるようなセミナーや動画など、現場の方に届くような活動もしていきたいです。

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NEXCO中日本サービスの永冶様、お忙しい中お話をいただきありがとうございました。

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