導入の目的
- 生理休暇の取得率が低い現状や、生理を話題にしづらい雰囲気を踏まえ、男女問わず理解を深めるきっかけを作るため
- 国際女性デーに合わせたイベントとして、推進室担当者が研修の存在に関心を持っていたことに加え、社内で実施を望む声が上がったため
導入の効果
- 若手男性社員を中心に「みんな体験した方がいい」とポジティブな口コミが広がり、役職や性別を問わず多くの社員が参加した
- 当初の目的だった痛みの理解に留まらず、「目には見えない不調」を抱える人への想像力や、マイノリティへの配慮といった、より普遍的な気づきと思いやりの醸成につながった
デジタルマーケティングを軸として多様な事業を展開する株式会社CARTA HOLDINGS(東京都港区)では、サステナビリティ経営を重要な経営方針と位置づけています。「サステナビリティ推進室」が中心となり、社員が「楽しい」と語るボトムアップの活動が、次々とポジティブな循環を生み出しています。
その原動力には、同社のサステナビリティビジョン「『人の想い』が『未来を動かす力』となる社会の実現を目指して」を土台として、会社と社員が対話を重ねて課題解決していくサステナビリティ推進室のあり方があります。生理痛体験研修のほか、「親子出社WEEK」などのユニークな施策はどのようにして生まれたのでしょうか。
今回は、サステナビリティ推進室が2025年3月の国際女性デーに合わせて実施した生理痛体験研修をテーマに、同社が目指す「誰もがフラットに挑戦できる」組織の現在地と未来について、サステナビリティ推進室のおふたりにお話を伺いました。

【参加者】
株式会社CARTA HOLDINGS サステナビリティ推進室/コーポレートブランド室 広報担当 小山麻美子様
株式会社CARTA HOLDINGS サステナビリティ推進室/社長室 経営企画・IR担当 嶋津美穂様
※本記事は2025年8月時点の役職・情報に基づいています
ポジティブな「サステナビリティ推進室」の土壌
――CARTA HOLDINGS様の事業概要と、サステナビリティ推進室について教えてください。
嶋津様(以下、嶋津) CARTA HOLDINGSは現在、デジタルマーケティング事業、インターネット関連事業、HR事業の3つを事業の柱としています。最も事業規模の大きいデジタルマーケティング事業では、クライアントのマーケティング支援から、広告配信システムの開発、広告代理店事業まで幅広く手掛けています。社員の男女比は、約6:4です。
小山様(以下、小山) サステナビリティ推進室は、取締役 執行役員CSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)の梶原理加のもと、8名のメンバーが所属しています。特徴的なのは、メンバー全員が広報、IR、法務、人事なども兼務している点です。これは、サステナビリティを専門部署だけの取り組みにせず、メンバーが現場に持ち帰り、それぞれの部署で推進していくことを目的としています。
――サステナビリティ推進室が設立された経緯を教えてください。
嶋津 2021年に、社内横断のプロジェクトとしてサステナビリティ推進室の前身にあたるチームができたのがきっかけです。そこから1年間、女性活躍推進を中心としてダイバーシティに取り組みました。その後、2022年に発表した中期経営方針で、経営の軸として「サステナビリティ経営」を打ち出しました。それを機に、ダイバーシティだけでなく、環境保全やガバナンス、健全なデジタル広告の発展といったより広い課題を扱う「サステナビリティ委員会」を設置しました。
委員会は主に取り組みのモニタリングの役割を担っていましたが、実質的な活動を前に進めるために、委員会と推進する組織を分けて、2025年から「サステナビリティ推進室」という現在の形になりました。
――具体的な取り組みについても教えていただけますか?
嶋津 2025年1月に、社会環境の変化や新しい技術への対応を踏まえ、重点的に取り組む課題(マテリアリティ)の見直しを実施しました。そのマテリアリティに沿ってチームを組み、活動しています。環境、人材育成、ガバナンスなどに分かれています。
小山 例えば、環境分野では、山梨県甲州市勝沼町と提携して森林整備ボランティア活動や地域との交流を行うプロジェクト「CARTAの森」での取り組みを行っています。この活動には社員が参加し、環境意識を高める機会にしています。当社の事業活動には日常的に新たな「消費」を促進する側面があるため、木を守る、生み出すという形で自然の循環を回復し、持続可能な未来を実現するための取り組みと位置づけています。
嶋津 また、仕事と育児を両立するための支援として、夏休み期間中に「親子出社WEEK」を企画しました。お子様が家で一人での留守番になってしまい、学童保育にも行けないといった状況でも社員が安心して出社して働けるように、子どもを会社に連れてこられる施策です。今年初めての試みで手探りでしたが、試験的に行った最初の2週間の反響が良く、期間を延長しました。
他にも、女性の活躍支援の施策として、以前から行っていた低用量ピルの服用支援に加え、更年期障害の方向けの漢方薬支援を始めたり、性別に関わらずリーダーシップを発揮してもらうためのコーチング研修を実施したり、育休復職者向けの研修に力を入れたりと、社員の声を聞きながら活動を形にしています。

「これはみんな体験した方がいい」口コミで広がった生理痛体験への共感の輪
――今回、生理痛体験研修を導入した背景は何だったのでしょうか?
小山 当社のカルチャーとしては「生理休暇が取りづらい」といった雰囲気はなく、風通しはよいと思っています。しかし、実際の休暇取得率は低いという現状がありました。おそらく世間でも同じかと思うのですが、社内でも普段、生理についてあえて話題にすることがない中で、男女問わず体験してみるのはいいかもしれないと思いました。
嶋津 私は生理痛体験研修があることをネットで見て知っており、いつかやってみたいと思っていました。そんな中でちょうど紹介をいただいたのと、同じように体験研修を知った社員から「CARTAでもできないか」という声があったんです。
――研修当日の様子はいかがでしたか?
小山 国際女性デーのイベントとして、事前に希望者を募ったところ、定員の50名はすぐに埋まりました。当日は、同僚が体験したのを見て、事前に希望していない人たちも「今からでもできますか?」と体験ブースに来たり、社長や役員も自ら体験したりしました。
嶋津 特に印象的だったのは、若手の男性社員が多く参加したことです。痛みの感じ方やリアクションは人それぞれだったのですが、体験を終えた彼らが「これはみんな体験した方がいい」「チームの人にも体験してほしい」と、その場で同僚を呼びに行く光景も見られました。男性側の発信による口コミでどんどん輪が広がって盛り上がっていきましたね。
小山 社内カフェのあるオープンスペースで開催したのですが、休憩のタイミングで生理痛体験をして仕事に戻ったり、普段はリモートワークの方が生理痛体験のためだけに出社してくれたりして、うれしかったですね。実施する前は反響が見えないところがあって不安でしたが、終わった後には「家に帰ったら妻に優しくします」といった素直な感想も多く聞かれ、当初の予想以上にポジティブな受け入れられ方をしました。
――大変ありがたいです。
嶋津 今回の研修がポジティブに受け入れられた背景には、3年前から継続して取り組んでいたということがつながってきたと考えています。活動を始めた当初、ダイバーシティや女性活躍を掲げた際には、「なぜ女性だけが対象なのか」といった声も上がり、同じ社内でもダイバーシティの受け止め方がさまざまで、活発な議論が巻き起こりました。
そのような議論や対話を重ねたことで、多くの社員とともにダイバーシティについて考える機会を持つことができました。もし、こうした土壌ができていない段階で同じ研修を行っていたら、また違った反応になっていたかもしれませんね。
小山 生理痛体験研修では大きな発見がありました。当初は「女性の痛みを男性に理解してもらう」ことが主な目的だと考えていたんです。でも、参加者からは「目には見えない体の不調を抱えている人がいるかもしれない」という、より普遍的な気づきにつながったという声があったのです。これは、マイノリティの方々への配慮や気遣いにも通じるきっかけにもなりました。
――3年前からのサステナビリティ推進室のお取り組みが、社内共通の土壌として育まれていたのですね。
小山 そうかもしれないですね。 ただ、お互いの認識とか考え方が少しずつ融合していくのには本当にすごく時間がかかるなと思っています。何かを発信したら、それで100%受け入れられるかというと、 そうではないので。
嶋津 少しずつ前に進んでいると感じます。生理痛のことや子育ての負担について社内で話題にしてくれる方も増えました。そういった声を受けてどのように解決していこうか、会社と社員がともに考えて取り組める環境になったと思います。
――社内の意識がかなりそろってきているのですね。
小山 ダイバーシティに関しては、3年間の活動を通じて社員の課題意識がかなり共有されてきたと感じています。
一方で、「サステナビリティ」という言葉を使い始めてまだ1、2年ということもあり、こちらはまだ完全に浸透しきれていないのが現状です。ESGといった投資家向けの側面もあるため、社員にとっては少し自分事として捉えにくい部分があるのかもしれません。
個別のテーマ、例えば「環境に配慮する」や「ガバナンスの強化」といった話であれば、誰もが「当たり前のことだ」と理解してくれます。しかし、それらを包括した「サステナビリティ」という言葉になると、少し抽象的で、全体像がつかみにくいと感じる社員もいるかもしれませんね。
目指すのは「女性が働きやすい」ではなく「誰もがフラットに挑戦できる」組織
――今後のお取り組みや展望について教えていただけますか?
嶋津 やりたいことがたくさんあって、毎日とても楽しく取り組んでいます。課題はたくさんありますが、「なんとかしなきゃ」という苦しい感じではなく、ポジティブな気持ちです。
サステナビリティ推進室は、現場の視点を大事にしています。困っている人がいたら、それをどのように解決していくか。「親子出社WEEK」のように、社員から「これがあったらいいね」という声が上がれば、それを一つひとつ形にしていくと、結果が比較的すぐに出て、反響やフィードバックがダイレクトに返ってきます。「助かっています」「企画は良かったけど、少し実態と合わなかったからあまり課題が解消されなかった」などのフィードバックをもらいながら、「じゃあ次はこうしてみよう」と対話を通じて解決していくのが大事だと実感しています。

――ダイバーシティ推進において、メッセージの発信で意識していることはありますか?
嶋津 私たちは「女性が働きやすい」という限定的なアピールではなく、「誰もがフラットに挑戦できる環境である」というメッセージを大切にしています。
女性だからという理由で特別扱いをしたり、管理職比率の向上が目的になったりするのではなく、あくまで社員一人ひとりの成長をサポートするというのが私たちのスタンスです。
もちろん、働きやすさを支える制度は重要ですが、それは一人ひとりの成長や挑戦のための制度です。会社は、社員本人がキャリアを切り拓いていくのを支える存在でありたい。その想いを、全ての場面で伝えるようにしています。
――とても先進的なお取り組みをされているように伺えます。
小山 「えるぼし認定」「PRIDE指標」など、受賞したり認定をいただいたりして、 社内の理解も高まっていますし、いろいろな角度から取り組みができていると思います。一方で、CSOの梶原は、役員が9人いる中で女性1人なんですね。経営全体でのサステナビリティ経営の温度感は、もうちょっと上げていかないといけないなと思っています。先進的なだけではなく、まだこれからのところもあると感じています。
梶原のマネジメントスタイルは、方針を決めて、あとはみんなで必要だと思ったことをやっていくというように現場に任せてくれるので、いろいろなことを進めやすいです。目指す場所への行き方にはいろいろな方法があると思うので、 現場にいる我々が進みたい道で、少しずつみんなで近づいていきたいですね。
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CARTA HOLDINGSの小山様、嶋津様、お忙しい中お話をいただきありがとうございました。