百十四銀行

産業保健師が語る導入の舞台裏。「会社にいる間だけ元気ならOKではない」百十四銀行のウェルビーイングと健康経営へのチャレンジ

導入の目的

  • 多様な働き方を支援し、職員のウェルビーイングを向上させるため
  • 職員が働きやすい職場環境の醸成のため

導入の効果

  • 参加者は、痛みを我慢しながら集中して業務を行うことの困難さを実感し、認識を改めるきっかけとなった
  • 口にすることが少なかった「生理」という言葉を自然に会話で使えるようになり、女性の痛みへの理解が研修前よりも一層深まった

株式会社百十四銀行は2025年2月17日、中四国の地方銀行で初めて、リンケージが提供する生理痛体験研修を導入しました。これは、多様な働き方を支援し、職員のウェルビーイング向上を目的とした「ダイバーシティ&インクルージョン」および「健康経営」への取り組みの一環として行われたものです。

百十四銀行は、女性活躍や健康経営に積極的に取り組んでおり、経済産業省が設計した「健康経営優良法人認定制度」において、健康経営優良法人2025(大規模法人部門)の「ホワイト500」に認定されています。

今回は、百十四銀行における健康経営への取り組みや社内の体制、生理痛体験研修の導入のきっかけについてお話を伺いました。

【参加者】
株式会社百十四銀行 人事部給与厚生グループ グループ長 秋山英司様
株式会社百十四銀行 人事部給与厚生グループ 健康管理室 保健師 大道美佳様
※2025年8月時点の役職

* * *

――会社の概要や事業内容について教えていただけますでしょうか。

秋山様(以下、秋山) 百十四銀行は、香川県高松市を本拠地とする地方銀行で、数少ない「ナンバーバンク」の一つです。名前は114番目にできた国立銀行の名残ですね。

香川県は日本で面積が一番小さな県で商圏も小さくはありますが、四国の玄関口として栄えていたこともあり、早くから東京、大阪、福岡にも進出していました。多くの地方銀行は地域に根差した支店が多いのですが、百十四銀行は香川県内に半分、香川県外に半分の支店があるという広域展開となっています。

――秋山さまと大道さまの業務内容についてお伺いできればと思います。

秋山 人事部の給与厚生グループで、職員の給与全般と福利厚生を担当しています。福利厚生の一環として健康経営にも携わっています。

大道様(以下、大道) 人事部の所属として「健康管理室」という部署があり、私を含め産業保健師3名、事務が2名、計5名で業務に当たっています。主な業務は健康診断とそれに伴う保健指導、二次検査の勧奨や、メンタル不調者のフォローとしての相談業務、ストレスチェックなどです。また、全国にある支店に出向いての面談も行います。 健康経営にも全面的に関与しています。

(左:秋山さま、右:大道さま)

「産業保健師3人体制」で健康経営に取り組む

――産業保健師の方が銀行で直接雇用されているという形態は一般的なのでしょうか?

大道 産業医は法律で決まっているので大きい会社さんなら必ずいらっしゃるのですが、産業保健師が直接企業に雇用されているケースは少ないんじゃないかと思います。

――先ほど3名の保健師の方がいらっしゃると伺いましたが、それはかなり多い方なのですね。

大道 保健師の人数が3人になったのはここ数年のことです。私がこの銀行に来て8~9年くらいになりますが、当時は私だけしかいませんでした。人が増えた背景としては、健康経営に関する取り組みを始めたことに加え、経営陣を含め銀行全体で職員の健康面に目を向け始めたというのが大きいかなと思います。そこで業務量が増えてきて、人を増やしてもらったという経緯があります。

――健康経営へのお取り組みを積極的に進めている経緯についてお教えください。

大道 ずっと個人的に課題として温めている状態で、いずれそういうことができるようになればと思っていましたが、どうしても人手がなかったので、手が回っていませんでした。3~4年前に今の人事部長が人事部に来た際に、健康経営に目を向けてくれるようになったので、それに乗る形で話が進み始めました。ただ、取り組み始めた時には、いきなり前面に「生理」「女性の健康」を打ち出すのもちょっと……と考えて、少しずつ小出しにして、徐々に広めていきました。

――従業員の方の男女比はどのくらいなのでしょうか。

大道 大体半分ずつぐらいです。

――女性が結構多いのですね。ここ何年かのお話の中で、「えるぼし認定」や「くるみん認定」を受けていらっしゃるのは、かなりしっかりと取り組んでいらっしゃるように思いました。

大道 そういう取り組みも、初動の時に小出しでちょっとずつ広めていきました。一昔前では口に出すのは遠慮していた「生理」のようなワードでも、今ではもう、ばーんと出しても抵抗はなくなっていますし、男性上司でもそういう話題を口に出せるようになった人が増えてきています。

――いろいろなお取り組みをされる中で、どういった形で生理痛体験研修を知っていただいたんでしょうか?

大道 2023年頃に、私が個人的にネット上のニュース記事やYouTubeなどで「生理痛体験ができる機器がある」ということを知りました。奈良女子大学の学生さんが開発を行って、大阪の会社さん(大阪ヒートクール)が大阪大学と一緒に製品化をしたという話を見て、大阪ヒートクールさんのサイトを見に行ったら、「今問い合わせが殺到しているので受付を一時閉鎖しています」と出ていました。これは時間がかかりそうだなと思って、しばらく放置していました。

その後2024年の8~9月頃にふと「あの機器はどうなっているのかな」と思い出して検索してみたら、現在のような生理痛体験研修の形ができていたので、資料をまず取り寄せました。そこからYouTubeなども見て、その頃に千原ジュニアさんが生理痛体験をされていたのを見まして。「これは!」と。予約が殺到する前に動かなければと思い、すぐに上司に企画を上げました。

――生理痛体験の導入へのご懸念や反発の声はありましたか?

大道 そういう声はなかったです。研修の対象となる方を選んで個別にお声掛けしましたが、その時にもありませんでした。

秋山 男性の対象者に関しては私から声をかけさせていただきました。背景や職場環境の改善、女性の働きやすい職場を作るためには男性の上司、もしくは上司となるような若い方にも理解をいただく必要があるという前提で「こういう体験研修をするんだけど、ご参加いただけませんか?」というお話をしたら、皆さん「喜んで」「ぜひ」と言っていただけました。

女性の痛みに思いを巡らせていたつもりだったが、それ以上に理解が進んだ

――研修の対象者はどんな方々だったのでしょうか。

秋山 まずは管理職、役員を中心に選んでいきました。職員が日本全国に散らばっており、県外から香川に呼び寄せるのはなかなか難しいので、本店の建物の中、もしくは近隣の支店の支店長から選びました。

百十四銀行 2025年3月10日付プレスリリースより

――何名にご参加いただいたのでしょうか?

大道 20名で、男女半々です。

――研修当日で記憶に残っていることについて伺えますでしょうか。

大道 私も参加者として一緒に体験をさせてもらいましたが、私の場合は自分の生理痛の方が重かったですね。他の人の場合は、座ったまま固まってしまったり、動けなくなったりしている人が多かった、というのが一番印象に残っている光景です。

秋山 男性の視点から見ても、痛みもさることながら、「この痛みを我慢しながら仕事をしなければならないのか」ということが印象的でした。立つことも非常に難しかったですし、痛い中で集中して考えて作業するっていうのは非常に大変なことなんだなと思いました。

今回は男女を交えたグループに分かれて、グループディスカッションを行ったのですが、そこで私と同じ班になった男性はみんな同じことを言っていました。こんな状況で業務を行っていたということから、今までの認識を改めなくてはならないという意見が出ていました。

――研修後に、参加者の皆さまには何か変化はありましたか?

大道 「この研修はもっと男性が受けるべき」という感想が男性から聞こえてきました。同じ女性でも、人によって差があるので「自分基準にしたらいけないね」という話もありました。

秋山 私自身が女性に面と向かって「生理」という言葉を発することがこれまでなかったので、その場で普通に会話の中で出てきたというのは、自分の中では新たな第一歩だったのかなと思っています。女性の痛みなどには思いを巡らせていたつもりではありましたが、それ以上に理解が進んだという感じです。研修の参加者の個々の意識もちょっと変わってきているのかなと思っています。

――ありがとうございます。さまざまなお取り組みをされている中で、今後やろうとしていることと、そのご予定がありましたら、教えていただけないでしょうか。

大道 できれば、生理痛体験はまた参加者を変えてやりたいですね。また、今年は男性の更年期について考える場を設けたいとも思っています。過去には生理や妊活などの話題でも研修を開催しているので、単発で1回だけというのではなく、続けて開催して、「みんながそろそろ忘れかけているかな?」というタイミングで次の研修を入れるなど、思い出してもらえるようにリマインドのように継続して、手を変え品を変えというようにやっていくつもりです。

「会社に所属している間だけ元気」ならOKではなく、地域に戻っても元気でいられるように

――健康管理室としてのご活動についてもご紹介いただけますか?

大道 男性トイレにサニタリーボックスを設置しました。使用シーンとして想定したのは、泌尿器系疾患の方で自己導尿をする場合ですね。そういう方々はおそらく尿取りパッドを敷いていると思いますから、そういうものの交換が会社のトイレでできないのはおかしいですよね。後は、今すぐのことではないかもしれませんが、将来的には紙おむつを使う従業員がいてもおかしくはないですし、それをトイレで変えたいと考えるのは当たり前のことだと思いますし。

大腸がんの治療で人工肛門をつけている方に向けてトイレをオストメイト用に作り替えるとなると、ハードルが上がってしまいます。でも、せめてトイレの個室で何か処置をした時にそれに伴って出るゴミをトイレで捨てて帰りたいと思うはずです。LGBTQの方がトイレを使うということもあるだろうと思います。そういうものを全部ひっくるめてカバーできる形として設置しています。

――人事部給与厚生グループの今後のお取り組みについて、最後にお聞かせいただけますか。

秋山 普通の銀行としての業務であれば、お客様に対してどう接していくかという話になりますが、我々人事部にとっての「お客様」は職員となります。その職員がとにかく気持ちよく健康で働ける職場環境を整えることが自分たちの使命だと思っていますので、「健康」にスポットライトを当てながら、それ以外にも働きやすい職場を作れるように常に考えています。福利厚生の充実ももちろんその一環です。

給与厚生グループの話だけではなく、職員に会社を好きになってもらえるような何かを作り上げていくようにしていきたいと思っています。

大道 個人的には、産業保健の仕事は「元気な高齢者を地域に返す」ということだと思っています。「会社に所属している間だけ元気ならOK」ではなくて、会社を退職して地域に戻った時にも元気な高齢者であるためには、会社にいる間を元気で過ごす必要があると考えていますので、そこはこれからも変えず、ブレずにやっていこうと思います。

世間の流れも会社全体の流れも、「100%仕事」ではなく、ワークライフバランスというものを本当の意味で分かってくれてる人も増えてきていますし、元気じゃないと仕事もできないっていう意識ができていることを肌で感じているので、それはどんどんこれからも意識を起こしていこうと思っております。

百十四銀行の秋山さま、大道さま、お忙しい中お話をいただきありがとうございました。

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