2016年に「女性活躍推進法」が施行されて以降、女性が働きやすい環境で、自身の個性と能力を十分に発揮できる社会の実現に向けてさまざまな取り組みが推進されています。しかし、厚生労働省の「働く女性の状況」によると、2018年時点の女性の労働力人口総数に占める女性の割合は半数以下の44.1%です。少しずつ女性活躍の場は広がっているものの、まだまだ改善の余地があると言えます。
そこで、リンケージは11月10日に「女性が働きやすい職場」を目指すために必要な、女性の健康課題への取り組みについて考えるウェビナーを開催しました。今回はウェビナーの中で特に印象的なトピックをレポートします。ゲストにはミュゼプラチナムの柳沼さまをお迎えし、進行をリンケージの夏目が務めました。
登壇者プロフィール
社長室 広報PR課 課長 CSR推進室 室長
柳沼 政樹
飲食事業の広報担当者として、ラーメンどっぷりの生活を5年ほど続けたのち、2015年よりミュゼグループ全体の広報責任者として従事。CSR活動の一環として取組んでいるピンクリボン活動を通じて女性の健康課題を痛感し、ミュゼハッピープロジェクトの立ち上げや従業員のヘルスリテラシー向上の活動を行う。
取締役COO/CSO
夏目 萌
ミュゼプラチナム社の取り組み(一例)
・社内の課題を見える化する
・女性の健康課題に対して、会社としてのゴール設定を明確にする
・「共感」をキーワードに健康課題への理解促進を促す
アンケートで浮き彫りになった女性の健康課題
最初にミュゼプラチナム柳沼さんから、女性の健康課題への取り組みについて紹介していただきました。ちなみに、ミュゼプラチナム社の社内の男女比は、男性100名(平均年齢42歳/本社勤務)、女性3400名(平均28歳/大半が現場)と女性比率が約97%だそうです。
柳沼さんは当初、平均年齢が若いこと、健康診断の結果を確認しても異常がある社員がほとんどいなかったことから、社内ではほぼ全員が健康を維持できているものだと考えていたそうです。
しかし、その考えは社内で実施したアンケートの結果により大きく覆されます。それは、生理やPMSの症状で困っている社員が多いといったことでした。特に生理痛においては、社内だけでも有症率が約8割にのぼるだけでなく、生理痛が原因で仕事を休んだことがある方が12.8%もいることがわかりました。
実は、若い世代では特に、男性に比べて女性の疾病リスクが高いことがわかっています。さらに、男性は健康診断で健康状態の危険が察知できる病気が多いのに対して、女性は仕事に影響する、顕在化しにくい特有の健康疾患が多くあります。
ミュゼプラチナム社では、労働基準法に従って生理休暇を設けています。しかし、このように元来女性の健康課題改善のため積極的に取り組んできたミュゼプラチナム社ですら、生理等の症状に悩む女性社員たちの現状を把握できていませんでした。
その要因は、生理休暇ではなく有休を利用する女性社員が多く、生理が理由で休暇をとっている実態がわからなかった点にあります。そこで、生理やPMSなど女性特有の健康課題に対し、正しい対処法を学びながら、休暇等を活用できる体制を整える必要があると考えるようになったそうです。
話を聞いていたリンケージの夏目は、ミュゼプラチナム社の考え方に「生理に対してそれぞれが正しい理解をした上で、根本解決のために休暇を活用できればよりベターだと思います。」と共感しました。
会社としての目標設定がカギ
ミュゼプラチナム社ではまず、生理やPMSについて社員全員が理解し、チームづくりを目指しました。そしてその第一歩として取り組んだのは、柳沼さん自身が婦人科の先生などへ当たり、生理やPMSについて理解を深めることでした。
そこでわかったことは大きく4つです。
・症状は、同じ女性であっても個人によって異なること
・同性同士でも生理に対する価値観がバラバラであること
・生理痛を放置すると子宮内膜症などの病気が進行する可能性があること
・就労にも大きな影響があること
同僚からの後押しもあり、柳沼さんはこうした状況を把握したうえで、社員全員がいまよりさらに働きやすい環境の構築を目指すことにしたそうです。そしてその実現に向け、婦人科の先生たちを巻き込み、想い主導ではなく、会社にとってのメリットも考慮した、課題解決のための明確なゴールを設定しました。ミュゼプラチナム社が設けた目標は3つです。
・欠勤を減らす:12.8%から引き下げる
・無意識の偏見をなくす:リーダーやマネジメントに対して理解を促進する
・チームマネジメントへの活用:1人1人の症状を理解し、解消方法を提案できるように
具体的な取り組みとして、まず婦人科の先生を講師に迎え、生理の研修を実施したそうです。研修では、社員全員が生理について学びを深められるよう根本的な内容から講習されました。そしてその研修を踏まえて、「実際に生理で困っている人がいたらどう接するのか」を考えるワークをサロン内で実施しました。
さらに数ヶ月後には、研修を経て自ら行動を起こし、生理の困りごとを改善した社員が出演する研修動画を制作したそうです。柳沼さんはこう話します。
「ミュゼで働くサロンスタッフが出演する研修動画を制作すれば、スタッフも自分ごと化しやすいと考えました。さらに、「共感」を軸に各自がどう行動すべきかを、みんなが主体的に考えて改善していけると思ったんです。」
リンケージの夏目は、「確かに、テレビに知り合いが出て急に親近感が湧くのと同じように、研修動画に身近な人が出演していれば、自分ごとのように見て考えられるのでよい案だと思います。」と1つ1つのこだわりに驚きました。
柳沼さんは、指示をする、受けるだけでなく、みんなで考える機会をつくることが大事だと言います。ただし、闇雲にテーマを議論するだけにならないよう、「どうしたら主体的に病院へ行けると思いますか?」など、時間とゴールがありつつ、過程を考える機会を設けたそうです。
脅威の改善率を実現した3つのポイント
そして1年後、当初の目的としていた数値にも変化がありました。アンケートで、月経有症者の仕事への支障が、70.8%(2019)→58.5%(2020)へと変化したのです。また、欠勤率も12.8%(2019)→5.3%(2020)まで減少しました。この結果は、生理に対して対策する意識が芽生えた社員が、痛み止めを服用したり、病気が不安で病院に通ったりするようになったなど、具体的な対策を事前に講じられるようになったことが影響しているだろうとお話しされました。
最後に柳沼さんから、抑えるべき3つのポイントを教えてもらいました。
「1つめは生理に関する理解を促すことです。全員が共通認識を持てるよう、知識を得ることが大切です。2つめは共感することです。理解したことを行動に移せるよう、自分がではなく、相手がどう変わるかを考えること。そして3つめは、コミュニケーションを生み出すこと。ミュゼでも、サロン全体やチームでどのように解決に導けるかを考えられる体制をつくっています。」
企業が女性の健康課題について取り組むべき理由
リンケージの夏目からは、企業が女性の健康課題について取り組むべき理由について紹介しました。
「女性の健康とキャリアは大きな関係があると考えています。ですが、今日の柳沼さんの話でもあった通り、まだまだ女性自身が女性特有の健康課題について自覚せず、あとから困るといった状況は多いのです。」
「弊社の調査でも約5割が「通院の必要がないと考えている」と回答をしています。そこでリンケージでは、まず女性自身が特有の健康課題を自覚できるよう働きかける必要があると考えています。
さらに、周囲の理解不足に対しては、組織からのアプローチおよび改善も重要です。通院ハードルを下げる制度やオンライン診療などの活用で女性がより働きやすい環境づくりを実現すれば、企業としての価値や労働生産性を高めることができます。ぜひ社内でも女性課題の改善に向けた取り組みを検討してみてください。」
ウェビナーを終えて……
今回、女性の健康課題改善に向けて積極的に取り組まれているミュゼプラチナム社から、貴重なお話を伺うことができました。女性の健康課題は、不調を異常と捉えず放置してしまっている女性が多く、まだあまり理解されていないのかもしれません。
女性のさらなる活躍を実現するには、女性特有の健康課題に対する現状や、その上で女性の活躍をどう実現するか共感性をもたせながらわかりやすく伝えることが大切なのだと、ミュゼプラチナム社のお取り組みから教えていただきました。今回のウェビナーが、これからみなさまが女性特有の健康課題に対して、なにかお取り組みをされる際のヒントになれば幸いです。
リンケージでは企業の女性従業員に対し、月経に伴う症状や更年期障害といった女性特有の健康課題を改善へ導く法人向け女性ヘルスケアサービス[FEMCLE(フェムクル)]を展開しています。
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